【小説】真実湯のものがたり~第20湯 受け継がれる惣菜ばあちゃん~

今日も賑わう真実湯

旅館、真実湯(まことゆ)の湯守(ゆもり)をしとります、ゲンといいます。
よく温泉に入ると肌にいいとか、病気が治った、なんて話を聞きますがね。
真実湯に浸かっていかれたお客さんはどうも変わったことをおっしゃるんですよ。

私は長年、お湯と向かい合って、入られたお客さんと話し合って、いろんなお風呂の側面っていうものを見てきたんですよ。
それでは、真実のものがたりをお話ししましょう。

真実湯にはほぼ毎日17時頃になるとやってくる名物ばあちゃんがいます。
17時という時間は自炊のお客さんがぼちぼち調理を始めようかと、調理室に移動を始める時間帯。

この時間に宿に来ても、みんな忙しくしているんです。
そんな時間に毎日訪れるばあちゃん…その目的は「おすそ分け」。
自宅でとった山菜や近所の人からもらった野菜を調理して、宿泊者にふるまっているんですな。

おすそ分けというとみんなに愛されているような印象を受けますが、食べさせないと気が済まないというか、ちょっと強引なもんで、たまに苦情がくるようなばあちゃんなんです。

今回はそのおすそ分けばあちゃん、やえこばあちゃんのお話です。

親切とお節介は紙一重

やえこばあちゃんは20年くらい前に、同じ県内のよその村から引っ越してきました。
若いころに旅行で訪れたこの村が印象に残っていて、移住してきたと聞いたことがあります。

現在85歳、今でも農作業をこなし、一人で車も運転するし、ぼけることもなく、健康状態は私でも憧れるほどです。
そんなばあちゃんの健康の秘訣が「しゃべること」。

昼過ぎに農作業を終えて惣菜を作り、17時に真実湯に持ってきます。
調理室で総菜を配り、渡した人の出身地を聞いたり、昔話をしたり、気が合う人とは一緒に夕飯を食べる日もありましたな。
耳が少し遠いのと、一方的に話すもんだから、合わない人はもらった惣菜を返して部屋に戻ってしまって、やえこばあちゃんが帰るまで調理室が使えない、なんてこともありました。

時代は流れて湯治滞在をするお客さんが減ってくると、17時になっても調理室が静かな日が増えてきました。

そうなるとやえこばあちゃんのマシンガントークは2~3組のかたに集中してきます。
すると一層お客さんから苦情が来るようになってしまいました。

「ばあちゃん、帰るとき暗いと危ないから、16時くらいにくるようにしたら?
そんで暗くなる前に帰ったほうがいいよ。」

いつも、やえこばあちゃんの話し相手になっていたフロント担当者ようこさんからそう伝えると、ばあちゃんは渋々うなずいて、16時に来るようになりました。

名物ばぁちゃんが姿を見せなくなって

そんなやえこばぁちゃんが真実湯に来なくなったのは、それから2か月ほどしてからでしょうか。
転倒して足を悪くしたばあちゃんは市内の病院に入院しました。

あんなにおしゃべりが好きだったやえこばあちゃん。

さぞ寂しかろうなぁ……そう思って仕事の合間を縫い、やえこばあちゃんのお見舞いに行ってきました。
しょんぼりとしている姿を想像していると、変わらない元気な姿がありました。

「ゲンさんかい、どーもどーも、お見舞いありがとね。」
「ばあちゃん、なんだ、元気じゃないか。寂しくしていると思ってきたのになぁ。」
「余計なお世話だよ。ほら、見てごらんよ。」

ベッドの横にはたくさんの花やお見舞いの品が置かれていました。

「あんたのとこで仲良くなった人がお見舞いに来てくれんのよ。
おかげ寂しくないわ。
あたしはお惣菜を配ったけど、みんながあたしの元気を、病院まで持ってきてくれるの。
ありがたいねぇ。」

「やえこばあちゃんは真実湯の名物ばあちゃんだからなぁ。
はやく元気になって戻ってきておくれよ。」

「またみんなと真実湯で会って、もらった元気をお返ししないといけないからね。
退院したらすぐ行くからね!」

部屋を出ると、お見舞いにきている常連さんと会いました。

「こんにちは、お見舞いですか。」

「そうです。ようこさんからやえこばあちゃんがこの病院に入院しているって聞いて。」

苦情が来るようになってから難しい人、
という印象がついてしまっていたやえこばあちゃん。
なんだか安心しましたよ。
こういうお節介ばあちゃんは湯治場の象徴だと思いますから。

人と人を繋げる真実湯

人と人を繋げる真実湯
その2週間後、やえこばあちゃんは退院し、また真実湯に顔を出すようになりました。
ただ体力が衰えたせいか、週4日に回数は減りました。

その代わり、やえこばあちゃんと仲良くしゃべっていた仲間たちが週3日、総菜をもって調理室にやってくるようになりました。

誰も来られない日はフロント係のようこさんが、惣菜はないですが、おしゃべりのため調理場についています。

やえこばあちゃんの仲間はこう言っていました。

「やえこばあちゃんは真実湯には必要な存在ですよ。
煙たがる人もいますけどね、そのお節介とか、人間関係が湯治場には必要なんです。ほら、総菜食べてみて。」

食べてみるとどこかやえこばあちゃんの味。
やえこばあちゃんが作った湯治場の調理室とその味がしっかりと受け継がれたようです。

1泊2日の場合、朝夕食付きが普通になりました。
もし調理室がある宿なら、そこで自炊してみてはいかがでしょう。
その宿ならではの人間模様が見られるかもしれません。

貨幣経済が、こんな昔の日常を破壊していったのかもしれませんね。
さぁ、今日も、お風呂に入ってのんびりするか。

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