【小説】真実湯のものがたり~第10湯 ランナーの仕上げ湯~

年の瀬、年始の恒例行事に

旅館、真実湯(まことゆ)の湯守(ゆもり)をしとります、ゲンといいます。
よく温泉に入ると肌にいいとか、病気が治った、なんて話を聞きますがね。
真実湯に浸かっていかれたお客さんはどうも変わったことをおっしゃるんですよ。

私は長年、お湯と向かい合って、入られたお客さんと話し合って、いろんなお風呂の側面っていうものを見てきたんですよ。

早いものでもう年の瀬。
真実湯では年末年始の空室が埋まりました。
今年も毎年ここで年を越すお客さん達が揃います。
新年が明けると広間でみんなで箱根駅伝を見るのが真実湯の恒例行事になっていまして、お酒や食事を持ち寄って新年会代わりになっていますよ。

今年もそんな時期だなぁ…なんて思っていると、団体の学生さんの予約がはいったんです。
それがなんと、大学の駅伝部なんですよ!
これは新年会の応援も盛り上がるなぁ!
なんて思っていたんですが、彼らが私の知らない温泉の力を教えてくれたんです。

駅伝温泉

真実湯は山の温泉地ですから、予約が入ったと聞いときに高地トレーニングの合宿かと思ったんです。
きつい練習が始まるわけですから気合を入れて、ピリッとした緊張感でみなさんいらっしゃるんだろうと、ちょっと構えてお待ちしていたんです。

バスがついてお出迎えすると、なんとみなさんげっそりした顔で、緊張感もなにもなく…これで駅伝勝てるのか!?
私はそんな顔をしていたと思います。

チェックインを済ませた後はみなさん夕食まで部屋にこもっていましたよ。
練習している雰囲気はありませんでしたね。
期待が外れた寂しさというか、強い覇気みたいなものを求めていた私は、夕食後にくつろいでいた学生さんに聞いてみました。

「あの~、くつろいでるとこごめんなさいね。
皆さん駅伝の選手だとうかがったんですが…練習は明日からで?」

あまりに怪訝な顔をしていたんでしょう。
学生さんもなぜこの質問をされたかわからない様子で

「はい、ぼくたちは駅伝の選手です。
でもここに滞在している間、練習はしないですよ。」
「ええっ!?本番まであまり時間もないですよね?」

危ない危ない、つい「何しに来たんですか?」と聞きそうになりました。
それほど私が駅伝が好きだ、ということで勘弁してください。

「練習はここに来る前にみっちりしてきたんですよ。
監督がいうには、しばらくここで休養してから帰る、って話でしたね。」
「いままで合宿してすぐ帰ってたから、俺たちもどう過ごせばいいのかわかんないっすよ。
ほんとにくつろいでていいのかな…」
「監督は自由に過ごせっていってたからなぁ…3日間もなにしようかねー。」

何しに来たかわからないのは、私以上に学生さんが持っている疑問のようです。

「まぁ…ここは湯治場の温泉地ですから、のんびりするしかないですなぁ。」
「はい、そうさせてもらいます。」

最近の温泉旅行は近くの観光地に行ったり、近所の温泉旅館に日帰り入浴しに行ったり、何かしら目的があるもんですから、真実湯のような本当に何もない温泉には最近の若い人達は不慣れなんでしょう。
そこにちょうど監督さんがやってきて、

「お前たち、ミーティングするから広間に集合してくれ。」
「はい、すぐ行きます。」

足早に学生さん達は監督と広間へ向かっていきました。
そのあと学生さん達と会うこともなく、初日は終わりました。

監督の真意。温泉に望むもの

2日が経ち、やはり学生さん達は目的のない滞在に慣れないようでした。
私自身ももっと練習して本番に備えてほしい、なんて思っているので、朝食のあと監督さんにやんわりと、聞いてみたんです。

「こちらにいらしてもう3日目ですなぁ。
学生さん達は練習しなくちゃと焦っているようですよ。」

本来口出し無用なこと…なんとも無粋なじじいだと思われても仕方がないと思います。
監督さんは笑って

「ここに来る前の合宿は本番を意識した厳しい内容でした。
それを乗り越えたあいつらは自信を持っています。
このまま帰って残りの一か月、いまが最高の状態と考えてそれを維持するような気持ちで練習に臨むのか。
やり残しや自分の弱点を自分から考えて実行するのか、その差が結果に出るんですよ。
時間が少ない今だからこそ、目標を見据えつつも立ち止まって、焦りながらも体力を戻して、自分たちの力をさらに伸ばすための休養なんです。」

大変失礼な言い方かもしれませんが、温泉に泊まることに対してそこまでの意味を考えるかたっていないですよ。
こちらから言うことなんてなにもなく、うなづくしかありませんでした。

「あと、私は温泉の力…みたいなものは信じているんですよ。
体を温めることはもちろん大事なんですが、こういった環境で体を疲れさせることなく滞在することで、普段以上に体調が整うと思っています。
まぁ、それは彼らに、成績で実践してもらわないとね。」

「そうですね、優勝して、来年もまた泊まりに来てください。」

そういうと監督はにっこりと笑って部屋に戻っていきました。

大事な時ほど少し立ち止まる決意も

最終日、みなさんがお帰りのときに、学生さんに聞いてみました。

「うちに泊まってみてどうでしたか?」
「うーん、ご飯はおいしかったし、温泉もすごくよかったんですけど、
練習できないっていうのが正直つらかったです。
ああだこうだ考えちゃって、早く体を動かしたいです。」
「そうだよな…でも去年の合宿より疲れは全然残ってないぞ。
体はむちゃくちゃ軽い。合宿で出し切った気がしてたけど、いまならもっと早いかもしれない。」

なんとなく、監督のねらいは伝わっているようですね。

温泉滞在には「人生を立ち止まる」という考え方があると彼らから教えてもらいました。
「走りながら考える」っていうのは簡単ですが、なかなか器用なことですよ。
重大な決断をするときや、迷ったとき、温泉地に滞在して考えてみたらきっと自分の気持ちがしっかりと反映された考えが見つかるかもしれません。

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