【小説】真実湯のものがたり~第12湯 銭洗い温泉~

温泉でお金も清める?

旅館、真実湯(まことゆ)の湯守(ゆもり)をしとります、ゲンといいます。
よく温泉に入ると肌にいいとか、病気が治った、なんて話を聞きますがね。
真実湯に浸かっていかれたお客さんはどうも変わったことをおっしゃるんですよ。

私は長年、お湯と向かい合って、入られたお客さんと話し合って、いろんなお風呂の側面っていうものを見てきたんですよ。

それじゃ、今回も真実湯の物語を初めさせていただきます。
今回お話しするのは「銭洗い温泉」ですだ。

水が湧いているところに小銭をいれる習慣が、日本人にはありますよね。
いや、人類全体がそうなのかもしれません。

その理由は、泉に神聖なイメージが有るからだと思います。
その神聖な場所に物をいれて「清める」わけですな。

今回は、真実湯に泊まりに来ると、お金を湯治させるお客さんのお話をしましょう。
お金を湯治…あらためて言葉にするととんでもなく違和感があるのですが、ピッタリな言葉だと私は思いますよ。

記憶に残る。職人との出会い

30年ほど前、とある銀行の社員旅行を受けたんです。
まだまだ長期滞在が盛んな真実湯に、初めて短期滞在という宿泊をされた一団でした。
短期滞在、要は一泊してその夜に宴会をして、翌朝帰るという泊まりかたですな。
みなさんたくさん飲んで食べますから、宿の経営としてはありがたいもんですよ。
でもね、どうしても騒がしくなりますから、長期滞在のお客さんが我慢というか、まあそういう状況があったりもします。

その時にいらしたのが銀行員の大木さん。
当時は銀行のなかでも若手で、その一団のなかではお酒を注いで回るような役割をされていました。
その注ぎっぷりは完全に「できる若手」の風格でしたな。

みなさん酔いつぶれた深夜、私は大量の食器を洗い終え、日が変わろうとしている時間でした。
帰ろうとロビーを通ったとき、大木さんとすれちがいました。

「お疲れ様でございます。これからお風呂ですか?」

「そうです、これからいただきます。遅くまでお疲れ様です!
大量の食器ですよね、そりゃあこの時間にもなるなぁ…」

「まぁまぁ、これが私の仕事ですからね。
お風呂はお酒が入っていると危ないですからね、気を付けて入ってください。」

「大丈夫です、私は飲んでませんから。
じつは温泉にはいるのは初めてで、楽しみにしてきたんですよ!」

あれだけ注いで飲んでいない…。
私も日々お風呂をつくる「職人」を自負していますが、彼もまた飲み会で酒を注ぐ「職人」だったのです。

「人生初の温泉ですか。最初の温泉がうちで、しかも大浴場は貸切状態の時間ですね。
もう他にはいっても物足りないと思いますよ!」

「ははは!そうですね、ここの温泉だけにずっと来ることになるかもしれないですね。」

そんな冗談を交えてこの日は別れ、翌朝も団体のお客さんを見送る準備できちんとご挨拶することもありませんでした。

変わってしまった面影に

それから3年くらい経つでしょうか。
大木さんが真実湯に個人的に来てくださったのは。
ちょうどこの時期、しんしんと雪が降り、冬真っ盛りの季節です。

「番頭さん、ご無沙汰してます。以前銀行の団体旅行でお世話になった…」

同じ職人ですから、顔は覚えていたはずなんですが…すっかりやつれてしまっていたんです。
白髪が増えてうつろな表情でした。

「大木さん…ですね?…ようこそお越しくださいました、のんびりしていってくださいね。」

「ありがとう。ゆっくりさせてもらいます。」

ここは温泉地です。「どうかされたんですか?」なんて野暮なことは聞きません。
7泊8日、一週間の滞在でした。

その滞在は、最初はしっくりこないようでしたが、だんだんと他のお客さんと話したり、目的もなく散策したりと、自分なりの滞在を見つけたようで、だんだんと顔がスッキリとされていったように思います。

「前回いらしたときは初めての温泉でしたね。今回はどうでしたか。」

「まったく違うものになりましたよ。長く泊まるとこうも感覚が違うんですね。」

大木さんは少し間をおいて、こう続けました。

「仕事をしているうちに、なんだかお金がすごく汚いものに見えてきてしまって。
今回の滞在で温泉にはいって、自分の心は綺麗になったように思いますよ。
いろいろと決心がつきました。必ずまた来ます。」

すこし背筋が伸びたような背中を見送りました。

お金を湯治する

それから1年後、ますますやつれた大木さんがいらっしゃいました。

「どうしたんですか!?」

思わず聞きましたよ。
野暮とかそんなこと、気にかけている状態ではありませんでしたから。

「こんにちは。いやー勤めていた銀行を去年退職しまして、自分で会社をつくったんですよ。
ちょっと忙しかったもんで、だいぶ痩せました!ははは!」

身体は痩せても目は力強く、顔の血色がとてもよかったです。
充実した日々の表れでした。

「今回の滞在は彼らも一緒に体験してもらおうと思って、連れてきたんですよ。」

「これが…湯治をするんですか…」

「すみませんが、大きな鍋を一つ貸してください。」

大木さんが出して見せたのは、お金でした。
鍋をお渡しするとそのなかに温泉を汲み、持ってきたお金を浸けはじめました。
お札だろうと遠慮なしです。

お金がもたらす効能は人だけにあらず

「私の心を綺麗にしてくれた温泉ですから。
お金も物理的にはもちろん汚れますが、持ち主の使いかたで中身が汚れているものだってありますよ。
私が扱うお金は綺麗な状態でお客さんに渡したいんです。
その状態にお金をリセットできるのは、私は真実湯しか知らないんです。」

「お金の湯治…なるほど、面白いですね。」

「こういうのを湯治っていうんですか?湯治…いい言葉ですね。」

それ以降、毎年この冬の時期に大木さんはいらっしゃいます。
そのたびに湯治の参加者も、参加額も増えていますね。

温泉の効能に「お金が儲かる」なんてものはありません。
でも「お金が綺麗になる」かもしれません。
その綺麗なお金はいいものか悪いものかで判断するならば、
きっといいものに違いない、私はそう思いますよ。
そのお金を扱う人の心は…きっと綺麗だと私は思いますよ。

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