【小説】真実湯のものがたり~第13湯 温度当ての達人~

温泉の温度

旅館、真実湯(まことゆ)の湯守(ゆもり)をしとります、ゲンといいます。
よく温泉に入ると肌にいいとか、病気が治った、なんて話を聞きますがね。
真実湯に浸かっていかれたお客さんはどうも変わったことをおっしゃるんですよ。

私は長年、お湯と向かい合って、入られたお客さんと話し合って、いろんなお風呂の側面っていうものを見てきたんですよ。

みなさんはお風呂の好みの温度はありますか?
あつ湯好き、ぬる湯好き、人それぞれ好みはあるもんです。

真実湯で使っている温泉は70度くらいあります。
その温泉は外気の影響を受けますので、天候や季節によって温度は変わります。
あとは入るお客さんの数によっても変わりますね。

温泉っていうのはそういうものです。
決まった温度でお湯張りして、それを維持し続けることは手作業ではできないんです。
だから私は、湯船に手をつっこんで何度だと当てることはしませんし、できないです。

その「温度を当てる」ということに意味を見い出したお客さんと会う機会があったので、今回はその方のお話をしたいと思います。

温度当ての達人との出会い

「ここの湯船の温度は何度くらいなんですか?」

そのお客さんは宿に到着し、湯守である私を見つけると近づいてきて言いました。

「40~42度くらいを目指してお湯張りをしていますよ」

真実湯の風呂の全責任を担っている私ですから、面食らいましたが即返答しましたよ。

「なるほど、特定の温度を維持しているわけではないんですね…」

「維持できたらいいんですが、いかんせんそれも手作業ですし、
毎日温泉の温度も湧いてくる量も違いますからね。なかなか…」

「ふーん、そうですか」

お湯熱いよ!お湯ぬるいよ!と言われることはたまにありますが、それは私が調整を失敗したときくらいなもんで、実際に温泉に浸かる前に温度を聞かれたのは初めてのこと。
何を目的としているのかわかりませんでした。
こんな会話を交わしてそのお客さんは部屋へ入ってしまいました。

新しい日課

翌朝、といってもまだ日が昇る前の時間です。
湯船の温度を確認しようと浴室にはいるとそのお客さんが湯船に右手をいれていました。

「おはようございます」

「番頭さんか、おはよう」

「朝が早いですね。温度は大丈夫ですか?」

「ちょっとまって、いま当ててやるよ……」

そういうとその方は、温泉に浸けた右手に意識を集中しているようでした。

「………そうだな、42度かな」

「温度計、持って来ましょう」

最初にお話しした通り、私としては入れる温度であればいいと思っているので、厳密に温度を測ることはしていないんです。
久しぶりに温度計を出してみると温泉の成分でしょうか、すこしガジガジとした手触りに変わっていました。

「………43.6度ですね。すみません、熱いようなので少し埋めましょう」

「全然違ったか!わははは!」

すごくこだわっているわりにずいぶんと的外れな…温度にこだわりはないですが、おそらく私のほうが正確に当てるでしょうな。

「家の風呂でやるとそれなりに当たるようになったんだがなぁ」

「温泉にはいろいろな成分が入っていますから。
お湯の肌へのあたりや温度の感じかたはご自宅の水道とは感覚が違うと思いますよ」

「なるほどなぁ、一筋縄ではいかないな。今回の滞在で必ずあててやる!番頭さん、明日もこの時間に来てよ」

翌朝、同じ時間に浴室に行くと、そのお客さんが右手を湯船に入れていました。

「おはようございます」

「お、来たね。今日は昨日より少しぬるめだから、42.6度かな」

今日はあらかじめ、温度計を手にもってきて置きました。

「………41.8度ですね」

「そんなに違うもんかね」

「昨晩は雪でしたし、冷え込みも強かったですから」

「………明日もこの時間でよろしく」

そんな調子で一週間が経ちました。
端折ってしまって申し訳ないのですが、すこしずつ誤差がなくなって最終日のことです。

「おはようございます」

「おはよう。今日は自信あるよ。41.9度だ」

「………おお!41.8度!かなり正確になってきましたな!」

「へへっ!まずまず調子が出てるってことだな!」

いままで難しい顔をして温泉にはいられていましたが、無邪気な笑顔を見せてくれました。

「今日で帰るからよ、番頭さん、わがままに付き合ってくれてありがとうな。おかげでだいぶ体調がもどったと実感できた」

隠れた想いを

「調子がよろしくなかったんですか?」

「脳梗塞やっちまって、右手が麻痺してたんだよ。感覚もなくてさ。
リハビリも兼ねて家で湯船の温度を当てるってことをやり始めたら医者が驚くくらい回復してよ、湯治をしに来たわけ。
家の風呂の温度を当てられるようになるまで半年かかったけど、
全然違う環境でも一週間であてられるようになったんだから、間違いなく回復してるよな!」

「そうだったんですね。湯治にいらっしゃるお客さんは多いですが、私自身がその効果を目の当たりにするのは初めてですよ。お役に立ててよかったです」

「おう、ありがとうな」

湯船の温度がはいれる温度か、はいれない温度か。
決まった温度ではない温泉を扱う湯守という立場で考えたら、コンマ以下の温度はあまり意味のないものです。

そのコンマ以下を感じ取ろうとすることで自分の体調を知る。
知ることで前向きに生きていくことができるのであれば、私ももっと温度にこだわって温泉と向き合ってみてもいいのではないか、そう考えさせてくれた経験でした。

いやぁ~、温泉って本当に良いですね。
お湯に浸かって幸せな気分になるのは、全人類共通のもの。と私は、思っています。
福沢諭吉先生もおっしゃっています。
湯は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず
日本の温泉に入って、世界平和を目指そう!

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