【小説】真実湯のものがたり~第1湯 きっかけのロウソク~

温泉の本質は…

旅館、真実湯(まことゆ)の湯守(ゆもり)をしとります、ゲンといいます。
よく温泉に入ると肌にいいとか、病気が治った、なんて話を聞きますがね。
温泉の本質はそういうことじゃあないんですな。
私は長年、お湯と向かい合って、入られたお客さんと話し合って、いろんなお風呂の側面っていうものを見てきたんですよ。

真実湯とロウソク博物館

今回は、お泊まりいただいた男性のお話をします。

お話聞くところによると、本当にごくごく一般的なサラリーマンをしてらして、見た感じはお若く、30代前半、頬がこけて体の線が細いかたでした。
身だしなみはピシッとしていて、スマートな印象ですね。
だいぶくたびれた様子でした。

遅れに遅れた夏休み、温泉でのんびりしたいということで、真実湯を選んでくださったんですね。

早めのご来館でしたので、手持ち無沙汰だったのでしょうな。
「このへんで見るところはありますか?」
と聞かれたもんだから、ロウソク博物館を紹介したんですよ。

みなさんもロウソク博物館なんてきいたらどれだけ安っぽいところなんだろう、と思うでしょうなぁ。
想像通りのところですよ。

お客さんも同じ感想を持ったようで、思わず苦笑してました。
でも本当に近場で行けるところなんてそのくらいなもんです。
荷物を置いて、出かけられました。

しばらくして、戻ってらしたお客さんの手にはぶっといロウソクが握られてました。

「ロウソク、買われたんですね。」
「はい、ロウソクに彫り物をする展示があって、自分でもつくってみようかなって思いまして。」

ロウソク博物館をに気に入ってくれたんでしょうかね。
会話もそこそこに、お部屋に戻られました。

温泉へのご案内

18時の食事のあと、廊下でお客さんとすれ違ったので、ちょっと聞いてみました。

「どうですか、製作のほうは。」
「最終形が見えなくて、最初の一歩が踏み出せないんですよね。簡単じゃない、抽象的なイメージでつくりたいですね。」

イメージが湧かず、なかなか手をつけられないようですね。
でも、仕事のことは頭からしっかりと抜けているようで。
やっぱり温泉に来たら、気持ちは切り替えて、のんびりするのがいいですよ。

「お客さん、考え込むのも疲れちゃうから、とりあえずお風呂、はいられたらいいと思いますよ。」
「そうですね、温泉はいってゆっくり考えてみます。」

そういって部屋に道具を取りに戻られました。

その日はそれで、私の仕事も終わって家に帰ったんです。
私もそのかたがどんなものをつくるか楽しみだったもんで、布団のなかでちょっとワクワクしてましたよ。

翌朝、朝食のときにお客さんとお会いしまして、挨拶もせんで開口一番、聞いてみたんです。

「きのうはあれからどうされました? いいアイディア、浮かびました?」

こちらを向いた顔を見ると、だいぶ遅くまで起きてらしたようで、お疲れの様子でしたね。

「あのあと温泉にはいっていろいろ考えてたんですよ。私、プログラマーの仕事をしていて、ふだん数字と記号ばっかり眺めてるせいか、抽象的なものをつくろうと思うとどうしても記号っぽい、無機質な印象になっちゃって。でも温泉にはいってると心が柔らかくなるというか、きもちがふわふわしてくるっていうか。本来の私がしないような思考をしている感覚になったんですよ。」

きのうとは違う意味でくたびれているけど、目の色が違いましたね。

「お風呂にはいってから考えて、思考が無機質っぽくなったらまたお風呂…4回くらいははいりましたね。」

「お風呂っていうのはね、血圧が下がるから、複雑なことを考えるには向かないですなぁ。お客さんがふだん身を置いてる環境を考えたら正反対だって、私には感じますよ。ロウソクっていうのもさ、ゆらゆら燃える火を見ていると心が洗われるような感じがしていいですよね。それもまた、お客さんの心が求めてたもんじゃないかな。」

「そういう感覚でお風呂にはいることなんてなかったですよ。番頭さんにロウソク博物館を紹介されてなかったら、こんな日を過ごすことはなかったです。お風呂は4回も夜にはいっているのにそのたび適温で。きちんと管理していただいてありがとうございます。」

私だってね、私がつくったお風呂にはいってくださって、こんなに喜んでもらえたらうれしいですよ。
なかなかお客さんと顔を突き合わすこともないですし、お礼を言われることはもっとないですから。
私も気になってたことを聞いてみました。

「ちなみに、どんなものが彫りあがったんですか?」
「うーん…ちょっと恥ずかしいな。秘密にさせてください。」
「えー、楽しみにしてたんですがなぁ!じゃあまた来てくださったときには、絶対見せてくださいよ。」
「そうですね、お見せできるようなものを持ってきますよ。」

数年の時を経て

っていうのは実は5年も前の話なんです。
なんでこんな話をしたかっていうとね、昨日その方から荷物が届いたんですよ。

開けてみたらさ、コピー用紙くらいの硬い板に、彫り物で真実湯の外観が彫られてて。
その硬い板っていうのが、ロウソクなんですよ。ロウソクに彫り物がしてあるんです。

真実湯のみんなに見せたら「うわー」って。
言葉にならなかったですよ。
その荷物に一緒に入ってた新聞の切れ端には、あのお客さんが写っててね。

【かたやわらかい芸術 ロウソクの絵画】

なんて見出しがついてて。
真実湯のことも書いてありました。

もちろん、フロントに飾ってありますよ。
真実湯のロウソク画もね。

あとね、みんなに見せなかったロウソクが一本あったんです。
それは、あのお客さんが宿泊されたときに、一晩中絵柄を考えてた、ぶっといロウソクです。

見てみるとね、なーんにも彫られてないんですよ。
ただの薄汚れたロウソク。
…なんですけどね、あのお客さんの原点のロウソクだと思うと、私にとっては宝物です。

お風呂っていうのは、ただ体を洗うだけ場所じゃないですよ。
「きっかけ」をつかむ場所でもあるんです。
そんなお風呂の新しい価値っていうのを、あのお客さんから教わりました。

想いのこもったバス空間を作るなら、フリーバス企画へ

今回のお話はどうでしたか?
1日の疲れをリセットするお風呂の中では、思考もまとまり、新たな気持ちに切り替えてくれます。
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お客様一人一人のバスルーム空間を提供し続ける、フリーバス企画

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だから、私たちフリーバス企画は、
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