【小説】真実湯のものがたり~第3湯 湯掻き棒の精霊~

不思議な体験、あなたもありますか?

旅館、真実湯(まことゆ)の湯守(ゆもり)をしとります、ゲンといいます。
よく温泉に入ると肌にいいとか、病気が治った、なんて話を聞きますがね。
温泉の本質はそういうことじゃあないんですな。
私は長年、お湯と向かい合って、入られたお客さんと話し合って、いろんなお風呂の側面っていうものを見てきたんですよ。

今回のお話は、少し不思議な体験談です。

みなさんはおばけとか精霊とか、信じますか?
私はね、なんとなくいるんじゃないかくらいに思っていて。
見たことも感じることもないんですけどね。
このあいだ宿泊してくださったお子さんが、風呂場で見たらしいんですよ、精霊を!

少年と温泉旅館

少年と温泉旅館
そのお客さんが来たのはちょうど春、そろそろ桜が咲くかなぁという時期でした。

子供さんが春休みだったんでしょうね。
お父さん、お母さん、小学生くらいの男の子の3人で来てくださいました。

お父さんを独り占めできる久しぶりの時間だったんでしょう、元気いっぱいでね。
うちの女中さんがやんわり注意している姿を3,4回見ましたなぁ。

謝るお母さんの横で、お父さんも息子との貴重な時間、機嫌を損ねたくないみたいで。
何も言えない様子でした。

チェックインを終えて部屋にはいってからも笑い声が聞こえてきて、散歩に行くにも大はしゃぎ。
幸せそうで私も見ていて嬉しかったですよ。

夜。
お客さんの食事を一通り下げて部屋に布団を敷き、ひと段落したところで風呂場の様子を見に行きました。

「うわぁ!ごめんなさい!」

不意に子供さんが暖簾を押しのけて飛び出してきました。
飛び出してごめんなさいって謝っているのかな?

「こらこら、走ると危ないぞ!」

聞こえたのか聞こえないのか、部屋のほうへ走っていきました。
気を取り直して風呂場に向かうと風呂場から脱衣場にはいってくるお父さんの姿がありました。
その手にはなにやら木の棒があるようです。

「あ、番頭さん、ごめんなさい。うちの子がこの棒を折ってしまったんです。」

木の棒はどうやら「湯掻き棒(ゆがきぼう)」のようです。
ご存知ですかね湯掻き棒。

一言でいえば、湯船のお湯を撹拌するための棒ですな。
うちの温泉は直接湯船に注ぐには少し熱いもんで、お湯を撹拌して温度を下げるために、誰でも使えるように風呂場に置いてあるんです。

グラウンドの起伏を整えるのに使う「トンボ」みたいなかたちです。

「ごめんなさい、弁償しますので…」
「まあまあ、もう古いものですから、そろそろ変えるころかなぁなんて思っていたんですよ。気になさらず。」
「そうですか、すみません。」

ささっと体を拭いて浴衣を羽織り、小走りに部屋に戻っていかれました。
折れた湯掻き棒を見ていると、長いこと付き合った思い出があふれてくるようでした。

この湯掻き棒を使い始めたのは…何年前かなぁ。
たぶん20年は前でしょうな。
始めは木目も見えていていかにも木の棒という感じでしたが、どんどん黒くなっていって今じゃ木の棒じゃなしに、木炭の棒ですよ。
折れた湯掻き棒をゴミ捨て場に運ぶとき、なんだか普段より軽くなってような感じがしました。

思い出が伝えるものは…

翌朝、昨日の様子とは違ってしょんぼりした様子の子供さん。
棒が折れたときに怪我でもしたかな…なんて思って聞いてみました。

「おはようさん。今日は元気ないなぁ。どうかしたかい?」
「うわぁ!え、あ、おはようございます!」

挨拶をするとすぐお父さんのほうに走り出し、隠れてしまいました。
怒られると思ったのかなぁ、ちょっとショックですよね。
するとお父さんからこんな言葉をいただいたんです。

「昨日、あの棒を折ってしまったときにおばけが出たっていうんですよ。それ以来どうも元気がなくって…」
「はぁ…おばけですか。どんなおばけだったんでしょう。」
「すごい怒った顔をしたおじいさんのおばけだったそうです。湯けむりがギュッと集まって、人間の格好になったって言ってました。」
「…そのおばけ、どうやら私と同じ顔していたみたいですなぁ。」
「そうですね、子供の様子を見ていると、そんな感じがします。番頭さんが大切にあの棒を使ってきたんだなって、子供の話を聞いていて思いましたよ。本当に申し訳ないことをしました。」

確かに大事に使っては来ましたが、私が精霊になるなんてね。
おばけじゃあありませんよ。
私は湯掻き棒の精霊です。

みなさんも温泉旅館に行くときは備品を壊さないように注意してください。
きっとどれも、思い入れのある品のはず。ものに宿った精霊に怒られますからね。

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